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研究コース紹介

言語研究コース紹介

言語研究へのいざない

 ことばを話し理解する能力(言語能力)は人間ならば誰にでも備わっていて、かつ、人間以外の動物にはない人間独自の能力です。この能力によって私たちの「人間としての」活動の非常に大きな部分が支えられているのですが、あまりにも人間性の深い中核的なところに位置する能力であるため、私たちにとっていわば空気のようになってしまい、この能力に関しての科学的・学問的理解も、さらにはそれが必要であることすらも意外なほど世の中に行き渡っていません。中学・高校の授業科目にも「言語」という科目はありません。

 「日本語は英語などと比べて非論理的な言語だ」、「未開な民族が持つ言語は原始的だ」、「日本語では重要な役割を果たす動詞が文末に来るので、日本人はコミュニケーションが苦手だ」、「人間だけでなく、類人猿だってイルカだって言語を持っている」、等々。これらはよく聞く言語に関する意見ですが、全て、ほとんど根拠がないか明確に間違った意見です。しかし、これらがなぜ間違っているのかを納得し、それをきちんと自分の言葉で説明できるようになるためには、それなりの学問的訓練を受ける必要があるのです。そのためには、どのような言語を対象にしても客観的に分析できる道具が必要ですが、そのような道具を与えてくれる学問が言語学です。最低限の言語学的知識は、言語に関してきちんとした議論をするために必須のものです。

 人間言語に関する最低限の科学的知識を得た後は、言語が持つ大きな広がりに応じてさまざまな研究領域が待っています。もちろん、言語学のさらに進んだ研究を勉強することもできますし、言語能力が何らかの要因によって阻害された状態を扱う「言語聴覚障害学」と呼ばれる分野を学ぶこともできるでしょう。これらの分野を学ぶことによって、人間の脳がどのようにして言語能力を担っているのかについても興味を惹かれるかも知れません。また、言語は人間の外に出て、他の人間と係わることによって、非常に重要な社会的機能を持ちます。従って、文化、歴史、経済、教育、権力、民族などの極めて重要な社会的諸側面と言語との間に密接な関係が生じてきます。これらの領域の研究も言語研究コースの重要な部分を成します。第一言語(母語)の獲得、第二言語(外国語)の学習、自分の学んでいる外国語と第一言語である日本語との関係、外国語同士の関係性(どこが同じ原理に基づいていて、どの部分が異なるのかなど)、などのトピックも高校までとは比較にならない深さで考えることができます。そして、通訳や翻訳などの「実用的」・技術的側面に関しても学べると同時に、それらを支えている学問的基礎にも触れることができるでしょう。

 言語研究の醍醐味とは、今まで持っていた常識(偏見)がくつがえり、思いがけない認識に到る驚きと、非常に多角的なものの考え方に触れることによって世界や人間を見る眼が深まり拡がる喜びだと言えます。ぜひ言語研究コースを専攻して、この驚きと喜びを体験してみてください。

言語研究コースの教育・研究上の理念

 本研究コースは,以下の視点をもって言語について研究することを主たる目的としています。

(1)人間にのみ与えられている言語能力を科学的に研究することを通して人間精神(人間の心の仕組み)の本質に迫る。

(2)日本語および諸外国語に関する経験的・記述的研究を通して言語の普遍性と多様性を深く考える。

(3)社会、歴史、文化、教育などのさまざまな人間の営みにおける言語の機能・役割を考察する。

言語研究コースのカリキュラム

 言語研究コースでは、言語を研究するために必要な基礎知識を導入科目でしっかりと学びます。そして、その後履修するコア科目には言語研究の幅広い領域にわたり多彩なプログラムを用意しています。3、4年次の演習科目では自分でテーマを決めて主体的に研究をすすめ、その成果を4年次に卒業論文としてまとめます。4年間の言語研究コースのカリキュラムはこのような導入科目・コア科目・演習科目・卒業論文という流れで構成されており、どの学科に所属していても、専攻言語と第一言語(母語)である日本語についての正確な知識に基づき、個別の言語を超えて言語の普遍性を考え、人間の本質にせまろうとするものです。

【導入科目】

 言語研究コースの履修を希望する学生は1年次で以下の科目の中から6単位を選択して履修することになります。これらの科目で言語を科学的に研究するために必要となるもっとも基本的な知識を身につけます(たとえば、音と意味を結びつける仕組みの本質、言語研究の諸分野とそこでのさまざまなアプローチ、言語の普遍性と多様性の基本的な側面など)。

 

<科目例>科目名が英語のものは、講義が英語で行われます)

「言語学概論」「日本語学概説」「Introduction to the Study of Language」
「応用言語研究入門」

【コア科目】

 「導入科目」で学んだ基礎知識の上に、2年次からより専門的な「コア科目」の履修が始まります。言語研究の広範な分野の科目が「理論言語学」「応用言語学」「言語聴覚障害学」「翻訳・通訳科目」の4つの系列にわたって合計120以上開講されています。皆さんの興味に応じて一つの系列で深く学ぶこともできますし、複数の系列にわたる科目を履修して知識を広げることもできます。「理論言語学」では人間の言語の構造と機能を学びます。言語の仕組みの中核をなす音声、文法、意味などについての科目があります。「応用言語学」には社会との関係の中で言語を考える領域、外国語習得・外国語教授法についての実証的な研究領域、コンピュ―タ―による言語情報処理について学ぶ領域などが含まれます。「言語聴覚障害学」では成人・小児の言語・コミュニケーションの障害を学びます。「翻訳・通訳科目」は実践的スキルの獲得とその学問的基盤を学びます。

 

<科目例>

「文法論」「言語処理入門」「社会言語学」「言語聴覚障害学概論」「翻訳論」
「通訳入門」

【演習科目】

 3、4年次で履修する「演習科目」はコア科目同様に4つの系列で開講されます。講義の受講を通して知識を得るという受動的な学習ではなく、各自の興味・問題意識に基づいてテーマを選定し、研究を進めます。文献を広く調べ、データ収集を行い、分析し、その結果について考察を行い、最終的には卒業論文としてまとめます。言語研究コースでの勉学の成果を後に残る形にする機会であり、大学生活の集大成でもあります。

<科目例>

「演習(日本語学)」「演習(外国語教育学)」「演習(言語聴覚障害学)」
「演習(翻訳論)」

履修モデル

以下のモデルに従う必要はありませんが、参考にして自身の履修計画を立てましょう。

導入科目 1年~ (6単位)
言語の科学的な研究に必要な最も基本的な知識(音と意味を結びつける仕組みの本質、言語研究の諸分野とそこでのさまざまなアプローチ、言語の普遍性と多様性の基本的な側面、など)を学びます。
科目例 言語学概論1・2、日本語学概説1・2、Introduction to the Study of Language1・2、応用言語研究入門1・2

*上記とあわせてコース共通導入科目(全学共通科目)の「言語と人間Ⅰ・Ⅱ」の履修を強く勧めます。

コア科目 2年~ (20単位)
4領域の計120以上の科目でより専門的に学びます。履修は複数の領域にまたがっても構いません。
領域 内容 科目例
理論言語学 人間の言語の構造と機能を学びます。言語の仕組みの中核をなす音声、文法、意味などについての科目があります。 統辞論、音韻論
応用言語学 社会との関係の中で言語を考える領域、外国語習得・外国語教授法に関する実証的な研究領域、コンピューターによる言語情報処理を学ぶ領域などが含まれます。 ヨーロッパの社会と言語、Sociolinguistics
言語聴覚障害学 成人・小児の言語・コミュニケーションの障害について学びます。 言語聴覚障害学概論
翻訳・通訳科目 翻訳・通訳の実践的スキルとその学問的基盤を学びます。 翻訳論、英語通訳基礎

演習科目 3年~ (4単位)
領域 内容 科目例
理論言語学 「コア科目」同様に4つの領域で開講されます。各自の興味・問題意識に基づいてテーマを選定し、能動的に研究をすすめます。3年次からの履修を勧めます。 演習 (日本語学) 1・2
応用言語学 演習 (外国語教育学)1・2
言語聴覚障害学 演習 (言語聴覚障害学) 1・2
翻訳・通訳科目 演習 (ロシア語通訳・翻訳研究) 1・2
卒業論文・卒業研究 4年 (6単位)
自ら選定したテーマに関して卒業論文を執筆し、言語研究コースの勉学の成果を形に残します。大学生活の集大成といえましょう。なお、副専攻の場合は履修できません。

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