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ラテンアメリカン・ウィークエンド(1)

 

今日は、研究の分野のことを書きたいと思います。

大学の教員は、いくつもの役割を兼任している、というふうに言うことができると思います。学生の皆さんや受験生の皆さんにとっては、教室で講義をしている姿しか思い浮かばないかも知れませんが、それは大学の教員が行っている仕事の一部でしかないのです。

前回のブログで書いたメキシコ出張は、大学行政の仕事、言ってみれば「大学」という組織を切り回していく「裏方」の仕事です。このような仕事は、すべての教員がやっているわけではありませんが、学長、副学長、学部長などといった役回りになると、その比重が大きくなります。

それに対し、すべての大学教員にとって欠かすことのできない活動が「研究」です。大学ではさまざまな分野の研究が行われていますが、私の場合はラテンアメリカ、特にメキシコを対象とした地域研究ということになりますが、「地域研究」とは、ある特定の地域(「国」の場合もありますし、それよりも大きな地域――例えば「ラテンアメリカ」――、あるいは小さな地域――例えばカナダの「ケベック地方」――の場合もあります)について包括的な理解を図る学問、とさしあたり考えてください(これについては、いずれお話しする機会があるかも知れません)。つまり、「メキシコ地域研究」といった場合、それは、私たちがメキシコという国(あるいはそこに住む人々)とおつきあいをしていく上で、その国がどのような論理で動いているのか、そこに住む人たちはどのようなものの考え方をするものなのか、そういった人たちが構成しているメキシコの社会はどのような特質を持ったものなのか、などを理解していこう、という営みなのです。ただし、メキシコのことを何でもかんでも、という訳にはいかないので(人間には平等に1日には24時間、1年には365日しか与えられていないのです)、私の場合は経済の分野を中心にメキシコを見ています。

さて、本題です。ちょうど1週間前になりますが、11月14日、本学「イベロアメリカ研究所」の創立50周年記念シンポジウムが行われました。「イベロアメリカ」とは耳慣れない言葉だと思いますが、ほぼ「ラテンアメリカ」と同じような意味だと、これもさしあたり考えてください。研究とは、特に文科系の場合には、資料を集めたり、文献を読み込んだりと、基本的には1人で行うことが多いのですが、その成果を他の研究者に聞いてもらって評価・批判してもらう、また他の研究者の成果を見聞きすることで、新たな知見や発想を得たり、視野を広げたりという効果があります。今回のシンポジウムは、その国際版で、メキシコ、チリ、そして韓国から第一線の研究者に来ていただいて、変化の激しいこの世界の中で、ラテンアメリカ地域というものをどのように理解していくのか、そのような理解がどのように変化しうるのか、ということを話し合いました。

私は、チリからはるばる30時間をかけて来てくださったセルヒオ・ゴメス先生(国連食糧農業機関ラテンアメリカ地域事務所研究員)の基調講演「ラテンアメリカ・カリブにおける土地収奪――その規模とインパクト――」に対する論評を担当しました。事前に送られてきたゴメス先生の論文を読み、それを日本で行われている議論の中に位置づけ、そしてその上で生まれた質問をゴメス先生に投げかける、という役割です。

このシンポジウムの概要については、そのすべてをここに記すことはできませんが、もし関心がありましたらイベロアメリカ研究所のウェブサイトで、シンポジウムや講演会など、どのような活動がこれからあるのかチェックして、ぜひ会場に足を運んでみてください。また、上智大学にはイベロアメリカ研究所のほかにも、地域研究を対象とする研究所がいくつもあります。いずれも外国語学部での学びに大きく関係する活動を行っています。ぜひアンテナの感度を高めて、気軽に首をつっこんでみてください。

イベロアメリカ研究所ウェブサイト https://dept.sophia.ac.jp/is/ibero/

ラテンアメリカン・ウィークエンド、土・日編は次回に続きます。

 

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