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ソウルでロシアを見る

 

6月3日と4日、韓国のソウルにあるChung Ang Universityで開催された「第8回東アジア学会 21世紀のユーラシアにおける対立と調和:ダイナミクスと美学」に出席してきました。

この「東アジア学会」は、スラブ・ユーラシア地域を研究対象とする日本・韓国・中国の人文・社会科学の専門家で作るそれぞれの国の学会組織を組織母体として、毎年、東アジアの国で開かれる大がかりな国際学会です。去年は上海で開催されましたが、私も参加しました。「東アジアスラブ・ユーラシア学会」と呼んだ方がわかりやすいかもしれません。この学会には、組織する3カ国のほか、モンゴル・ロシア・ウクライナ・イタリア・アメリカなどからも参加があり、毎回、数百人が分科会方式で研究発表を行なっています。

たとえば、今回、私が報告したのは、「多言語性から見たロシア標準語:学際的アプローチ」というセクションで、戯曲における多言語の芸術的役割を取りあげてみました。

私の専門はロシア文化研究ですが、訪れる国々では、ロシアやロシア文化にまつわる知られざる名所や魅力的な関係者との出逢いをいつも楽しみにしています。今回が二度目のソウルでは、前回見るチャンスを逃した史跡を訪れることができました。それが、「旧ロシア公使館」です。

詳しい解説は省きますが、これは、19世紀の終わりに、ロシアに接近しようとした李氏朝鮮の政治的中心地だった建物で、当時の指導者だった高宗がここへ避難したこともあります。そして、後にソ連領事館となり、朝鮮戦争の時にその大部分が焼け落ち、現在は、写真のように(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの越野剛氏撮影)、地上に見える部分が塔しか残っていません。建物は、市内を見渡せる高台にあり、市民公園となっていますが、近くに外国の公館がいくつかあるためか、公園も警備体制がとられています。

旧公使館の塔を見ていると、背後でさまざまな言語がこだましているような感覚にとらわれ、ここが歴史の荒波に翻弄されたことに思いを致します。

 みなさんも、海外へ出かけた折には、専攻している地域や対象にゆかりのある場所へ足を運んでみてください。視野がさらにひろがることでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

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